あなたは「しずらい」と「しづらい」のどっちを書けばいいか、迷ったことはありませんか?
声に出して読んだときに「しずらい」も「しづらい」も同じ音になるので、書くときにどっちが正しいか迷ってしまいますよね。
結局、そのときそのときで書くほうを決めてしまって、いつも表記がバラバラになってしまっていませんか?
それでは、ビジネスやあいさつの手紙などで相手に失礼になってしまうかもしれませんよ。
敬語で「とんでもございません」が実は間違いだったというように、仕事での言葉遣いでマナー違反にならないようにすることはとても重要です。
⇒「とんでもございません」は間違い敬語?正しい意味と使い方を解説!
実は、「しずらい」と「しづらい」のどちらを書くべきかは、日本語の問題としてはっきりとした正解の答えがあるんです。
「しずらい」と「しづらい」のどっちが正しいのか、それともどちらも正しいのか?
この記事ではっきりさせます。
さらに、似た意味の言葉「しにくい」とのはっきりした違いや使い方の違いも詳しく解説しますよ。
現代かなづかいでは「しずらい」は間違いで「しづらい」が正しい
「しずらい」と「しづらい」は、どちらも音ではほとんど同じなので、ひらがなの文字で書くときにどっちが正しいのか迷ってしまうのは仕方のないことです。
ところが、片方は完全な間違いであるとされています。
現代仮名遣いから見れば、正しい書き方は「しづらい」「やりづらい」などの「~づらい」のほうです。
「しずらい」などのように、「~ずらい」と「ず」のひらがなを使ったかなづかいは間違いとされています。
ですから、あなたが今まで「しずらい」と書いていたら、今日から「しづらい」と書くようにしましょう。
「しずらい」の書き方が、あきらかな間違いである意外な理由
現代仮名遣いの書き方では、「しずらい」と書くのは間違いで、「しづらい」と書くのが正しいと説明しました。
口で言うと同じ音なのに、「しづらい」と書くのが正しく「しずらい」が誤りとはっきり言えるのにはちゃんとした理由があるんです。
今から30年以上も昔の昭和61年(1986年)7月1日に、現代仮名遣い(内閣告示第一号)が日本全国に告示・訓令されました。
簡単に言えば、ひらがなでの書き方を日本全国で統一するために決めた規則です。
そこには、こんな内容が書かれています。
【表音本則】「ぢ・づ」を含む語は「じ・ず」で表す。
つまり、基本的に「ぢ・づ」のひらがなは使わずに「じ・ず」のひらがなで書きましょうということです。
たとえば、「稲妻」という言葉はひらがなで「いなずま」と書くのが正しいです。
熟語の2文字目の漢字が「つま」なので、「いなづま」と書きたくなります。
しかし、「ぢ・づ」を含む語は「じ・ず」で書き表す規則なので、「いなづま」ではなく「いなずま」と書くんです。
他の例では、「地面(じめん)」があります。
「地面」の1文字目は「ち」と読む漢字ですが、濁った場合は「ぢ」ではなく「じ」と書かないといけないので、「ぢめん」ではなく「じめん」が正しいです。
「しづらい」は、例外として「ず」を使ってはいけない書き方だった
現代仮名遣いの規則では、「ぢ・づ」は使わずに「じ・ず」を基本的に使う決まりになっています。
それなのに、「しずらい」が間違いで「しづらい」が正解なのはなぜなのでしょうか?
実は、「~づらい」の場合は、例外として「ず」ではなく「づ」の文字を使って書くと決められているからなんです。
『基本的に「じ・ず」で書く』と決められた「表音本則」のほかに、「準則」で決められている書き方の規則もあります。
【準則】いわゆる連濁・複合語、語意識の働く語彙に関しては、歴史的仮名遣における「ぢ・づ」を許容する。
「準則」の内容をすごく簡単に言いかえると、以下の2点になります。
- 「ちぢむ」「つづく」のように、「ち・つ」と「ぢ・づ」が連続するときは「ぢ・づ」を使う
- 「はなぢ(はな+ち)」のように、2つの言葉をくっつけた場合は「ぢ・づ」を使う
つまり、「ち」や「つ」が連続する場合と、2つの言葉を合体させて作られた言葉の場合は、例外として濁音を「ぢ・づ」で書きましょうと決められているんです。
ただし、「世界中(せかいじゅう)」のように、2つの言葉ではあるけれど1つのかたまりであるイメージが強い言葉の場合は「じ・ず」でも「ぢ・づ」でもどっちでもいいんだとか。
なんだか、ややこしいですね。
もう一度、「準則」の4つのポイントを引用します。
1「づ」「ぢ」は原則として用いない。
2「ちぢむ」のように同音が続いた場合に生じるものは、例外とする。
3「はなぢ」のように二つのことばの連合によって生じるものは、例外とする。
4「せかいじ(ぢ)ゅう」のように、二つのことばの連合である意識が現在では薄くなっているものは、「づ・ぢ」「ず・じ」のどちらで書いてもよい。
ここで、「しづらい」「わかりづらい」など「~づらい」の表記は、3番のケースにあてはまります。
「しづらい」は、「し」と「つらい」の2つの言葉を合体させた言葉なので、「はなぢ」と同じく「ぢ・づ」を使って「しづらい」と書きます。
「はなじ」と書くのが間違いであるように、「しずらい」と書くのも間違いになるんです。
「しづらい」という書き方は、意外にも例外として決められた書き方のパターンだったんですね。
「しづらい」と「しにくい」の意味や使い分けの違いは?
「しずらい」「しづらい」のほかに、どっちを書けばいいのか悩んでしまう言葉がもう1つあります。
それは、「しにくい」です。
「しずらい」と「しづらい」のどっちが正しいのかで悩む場合は、「しづらい」が正しい書き方と断言できます。
しかし、「しにくい」は間違った書き方ではないので、意味としてどちらを使えばいいのかを考えないといけません。
「しづらい」は気持ちの面で、「しにくい」は物理的な面で使い分けをする
「しづらい」ですが、漢字で書くと「し辛い」となります。
つまり、「しづらい」は「するのが辛い」という意味です。
「辛い(つらい)」は、「気持ちがつらい」のように使う言葉です。
よって、「しづらい」は「気持ちの面で、するのがつらい」という意味合いになります。
一方、「しにくい」は漢字で「し難い」と書きます。
「難い(にくい)」は漢字を見るとわかりやすいですが、「難しい」という意味です。
つまり、「しにくい」は「するのが難しい」という意味合いになり、物理的にするのが困難である状況を意味します。
物事をするのに、気持ちや精神面で抵抗があるのなら「しづらい」を使い、物理的な面で難しい場合は「しにくい」を使えばいいんです。
「しづらい」と「しにくい」のどっちを使えばいいかで迷ったら、気持ちの面でできないのかどうかを考えれば簡単に決められますよ。
「しづらい」「しずらい」「しにくい」の違いと使い方まとめ
「しづらい」「しずらい」はどちらの書き方が正しいのか、そして「しにくい」と意味や使い方はどう違うのかについて解説しました。
最後に、もう一度まとめるとこちらです。
- 「しずらい」のかなづかいは間違いで、「しづらい」と書かなければいけない
- 「しづらい」と「しにくい」の違いは、意味合いで使い分けをする
- 気持ちの面で難しいのなら「しづらい」、物理的に難しいのなら「しにくい」
「しずらい」「しづらい」「しにくい」、この3つにはこんなにはっきりした違いや使い分けがあったんですね。
これを知っておけば、もうこの先にどの書き方をすればいいのか迷うことはなくなりますね。
もちろん、「しづらい」「しにくい」だけに限らず、「やりづらい」「やりにくい」や「わかりづらい」「わかりにくい」などでも全く同じですよ。
「~づらい」の書き方と、「~にくい」との使い分けをしっかり覚えておきましょう。