野球のピッチャーの投げ方に「アンダースロー」というものがあります。
日本語に直訳すると「下投げ」になりますが、別にソフトボールのような投げ方ではありません。
ボールを投げるときに、手を水平にしたときより下の位置から投げる投法です。
アンダースローのピッチャーの動画がこちら
プロ野球でもなかなか見かけることが少ない投げ方ですが、見た感じなかなか投げる技術が難しそうですね。
こういう投げ方をすると、どういうメリットがあるのか気になります。
アンダースローにはいったいどんなメリットがあるのか?
また、デメリットは何か?
投げた球はどんな飛び方をするのか?
どれくらいの速さの球になるのか?
アンダースローについて、たくさんの気になる要素をまとめます。
サブマリン投法とも呼ばれるアンダースローの3つのメリットまとめ
「アンダースロー」という名前は和製英語で、海外で言っても通じません。
英語では「サブマリン」と呼ばれます。
ですから、日本でも「サブマリン投法」と呼ぶケースがあり、どちらも全く同じ意味です。
では、サブマリン投法いわゆるアンダースローには、一般的なボールの投げ方とは違ってどんなメリットがあるのでしょうか?
①ボールの飛び方やタイミングが珍しいのでバッターにとって打ちにくい
アンダースロー(サブマリン投法)の最大の特長は、ボールが下から浮き上がってくるように飛んでくる軌道です。
このボールの飛び方は、一般的なオーバーハンド(上投げ)では決して出せないもの。
ですから、独特な飛び方でバッターにとっては打ちづらいことこの上なしです。
打つときも、浮き上がる軌道なのでボールの下部分を打って凡フライになるケースも多くなります。
また、投げるときのモーション中に間を入れることもできるので、ボールが手を離れるタイミングをずらして打者が空振りしやすくすることもできちゃうんです。
②スピードが出せないピッチャーでも十分に戦うことができる
アンダースローは、その特殊な軌道で勝負する投げ方なので、スピードがなくてもストライクを取ったり、うまく打たせずにアウトにさせることができます。
あまり速い球を投げられない選手でも、アンダースローの特殊性を武器にすれば十分すぎる戦力のピッチャーになることも珍しくありません。
③軌道がワンバウンドにならないのでキャッチャーがミスをしにくい
アンダースローで投げた球は、下から浮き上がってくるような軌道で飛んでくるのが特徴です。
なので、キャッチャーに行くまでボールが落ちてワンバウンドになることがほとんどありません。
キャッチャーがワンバウンドで捕りにくい球の処理をミスしてしまうリスクが少なくなります。
日本と海外での歴代ピッチャーのアンダースロー最速記録まとめ
では、アンダースローで投げるピッチャーの最速記録はどれくらいの速さなんでしょうか?
日本のプロ野球と、海外のメジャーリーグでのアンダースローでの公式最速記録を比較してみましょう。
日本でのアンダースローの最速記録は、2018年の高橋礼投手の記録
日本のアンダースローの有名投手で、元祖と言えるのは「史上最強のアンダースロー」「
南海ホークスの選手で、投手5冠を達成したほどの名ピッチャーでした。
ほかには、1970年代~80年代に阪急ブレーブスで活躍した山田久志投手や、WBCでも投げていた楽天の牧田和久投手などが代表的な選手になりますね。
体勢が世界一低く「ミスターサブマリン」と呼ばれた、千葉ロッテマリーンズの渡辺俊介投手も有名です。
そんな中で、日本の最速記録を持っているアンダースローのピッチャーは、福岡ソフトバンクホークスの高橋礼投手です。
そのスピード記録は、2018年の日本シリーズの対広島戦で投げた146㎞/hになります。
海外での最速は150キロを記録している
海外のメジャーリーグで、アンダースローの最速記録はブラッド・ジーグラー選手の93マイル(およそ150km/h)になります。
ブラッド・ジーグラー投手は、アメリカ合衆国のアリゾナ・ダイヤモンドバックスに所属していた選手で、2018年に38歳で現役を引退しています。
世界の記録は日本のさらに上を行き、150キロ台を記録しているんですね。
やはり野球の本場のメジャーリーグはすごいです。
アンダースロー(サブマリン投法)の投手が上投げしても速くはない?
アンダースローで最速記録を出す投手のスピードが146㎞/hや150㎞/hなので、もしオーバースローで投げたらどれくらいになるのか気になるところです。
しかし、アンダースローの投手がオーバースローで投げても早くなるわけではないようです。
日本の最速記録を持っている高橋礼投手が、テレビ番組で言っていたことがあるんですが、オーバースローで投げた自己ベストは125㎞/hだそうです。
なんと、20キロも遅くなってしまうんですね。
やはり、投げ慣れていないフォームだったり、使う筋肉が違ったりするので、オーバースローのほうが速いとは限らないようです。
アンダースローの3つのデメリットまとめ
ここまで、アンダースロー(サブマリン投法)のメリットや最速記録をまとめてきましたが、アンダースローにももちろんデメリットがあります。
主なデメリットを3つまとめます。
①どうしても球速が遅くなるのでスピードで勝負をしにくい
アンダースローの最速記録は150㎞/hです。
オーバースローでは160キロも出ることがありますが、それと比べてどうしてもスピードは遅くなってしまいます。
ですから、アンダースローの投手がスピードでバッターと勝負することはなかなか難しいです。
まぁ、アンダースローはスピードより打ちにくい軌道での勝負なので仕方ないところではありますが。
②投げるフォームの関係で下半身の筋力と柔軟性が必要になる
アンダースローは体勢を低くして投げるフォームで、下半身の筋力や柔軟性が重要になります。
柔軟性が必要だと、どうしても向き不向きがオーバースロー以上にはっきりしてきてトレーニングではカバーしきれない場合も出てきますね。
ただし、腕と肩への負荷はオーバースローより少なくなるメリットはあります。
③投げるモーションに時間がかかるので盗塁されやすい
アンダースローは、投げ方の関係で投げるモーションを早くできません。
そのため、盗塁をされやすいデメリットがあります。
どうしてもクイックモーションが難しいのが、ピッチャーにとってアンダースローの大きなデメリットと言えるかもしれません。
アンダースローが海外メジャーリーグの選手に少ない衝撃の理由
メジャーリーグでは150㎞/hの最速スピード記録が出ているアンダースロー、いわゆるサブマリン投法です。
しかし、メジャーリーグではほぼ絶滅していると言われているくらい、アンダースローの投手は少ないです。
その大きな理由の1つとして、アメリカの大リーグで起きた悲しい事件があります。
インディアンスのレイ・チャップマン選手が、ヤンキースのアンダースローの投手カール・メイズ選手の投げたボールが頭に当たってデッドボールとなりました。
そして、メイズ選手は試合の翌日未明に亡くなってしまいました。
この事件がきっかけで、アンダースローの危険性が注目されるようになってしまい、今では絶滅と言っていいほどメジャーリーグでは見かけなくなってしまっています。
メジャーリーグでピッチャーに与えられる最高の賞である「サイ・ヤング賞」にもアンダースローの投手はいないようです。
サイ・ヤング賞についての詳細は「ダルビッシュ有と前田健太が候補のサイヤング賞とは?賞金はいくら?」にまとめてあります。
アンダースローで活躍するピッチャーがどんどん出てほしい
野球のアンダースロー(サブマリン投法)についてまとめました。
現在では、日本はもちろん世界でもとてもレアな投げ方であり、絶滅に向かっていると言っていいくらいの投法です。
しかし、その独特のフォームやボールの軌道などは、職人技や芸術と言っていい要素のある技術です。
このまま、アンダースローを投げるピッチャーが全くいなくなってしまうのは寂しい気持ちになります。
メジャーリーグではデッドボールの事故が起こっているのは事実ですが、アンダースローの独特で美しい投球フォームを見れなくなるのも悲しいことです。
個人的には、これからアンダースローで活躍するピッチャーがもっともっと出てきてほしいですね。
アンダースローの名投手が増えてくれば、デッドボールが起きないような対策や投げ方ももっと研究されて事故も減るという好循環になると思います。
レアながら魅せてくれる野球のテクニックの1つ、アンダースローをなくしてほしくはない気持ちですね。