「とんでもございません!」
普段の日常生活の中で、よく使う言葉でしょう。
ビジネスのシーン、近所づきあいでのシーン、いろんな場面で耳にする言葉ですね。
誰もが一度は口にしたり耳にしたりしたことがあるはずです。
しかし、「とんでもございません」は間違った言い方であることをあなたは知っていますか?
日本語の文法的に間違っている表現で、正しい言い方がちゃんとあるんです。
また、用法としても間違った使い方をしている人が結構います。
そこで、「とんでもございません」の正しい言い方と正しい使い方を解説します。
これで正しい敬語を使うことができて、人間関係での付き合い方にちょっとしたプラスを付け加えられますよ。
「とんでもございません」の言い方が明らかに間違いである理由
「とんでもございません」は、日本語として間違った言い方です。
「とんでもありません」も同様に間違っています。
そう聞いても、すぐには信じられないかもしれません。
それくらい、日常的に使われている言葉だからです。
「とんでもない」は1つの言葉なので、「ない」だけを変えるのは間違い
「とんでもございません」は、日本語の文法的になぜ間違っているのでしょうか?
「とんでもございません」の元の言葉は「とんでもない」ですよね。
この「とんでもない」という言葉は、「とんでも+ない」ではなく「とんでもない」の全体で1つの言葉なんです。
ですから、「とんでもない」の「ない」の一部分だけを丁寧語の「ありません」や「ございません」に変換するのは間違った言い方になるんです。
例えば、「ぎこちない」を「ぎこちございません」や「ぎこちありません」と言うのはおかしいですよね?
「ぎこちない」は、「ぎこち+ない」ではなく「ぎこちない」の全部で1つの言葉なので、「ない」の部分だけを変えて「ぎこちございません」と言うのはおかしいわけです。
「申し訳ない」を「申し訳ございません」と言うのは正しい日本語表現
「とんでもございません」と同じくらい使われて似たような言い方なのが、「申し訳ございません」の言葉です。
でも、「申し訳ございません」「申し訳ありません」は、日本語として正しい言い方なんです。
「申し訳ない」は「申し訳+ない」という意味の言葉です。
もっとわかりやすく言うと、「申し訳がない」というニュアンスですね。
ですから、「申し訳がない」→「申し訳がございません」→「申し訳ございません」という言い方ができるんです。
「とんでもない」は、「とんでもがない」という意味合いやニュアンスの言葉ではないので、「申し訳ない」と違って「とんでもございません」とはできません。
「とんでもございません」は、「ぎこちございません」と言っているのと同じことなんですよ。
「もったいない」→「もったいございません」、「味気ない」→「味気ございません」も同じです。
「とんでもございません」を正しく言い換えると?何と言うべき?
「とんでもございません」「とんでもありません」が間違いだとすると、本来の正しい日本語としての表現はどうなるのでしょうか?
「とんでもない」の敬語や丁寧語としての言い方は、シンプルに「とんでもないです」と言えばいいです。
もちろん、「ぎこちない」も「ぎこちないです」と言うべきですね。
もうちょっと丁寧に言いたいのなら、「とんでもないことでございます」という表現もあります。
正しい言い方でありながら「ございます」の表現を使うことができますよ。
「とんでもない」はビジネスシーンで安易に使いすぎないべき?
「とんでもない」の丁寧な言い方が、「とんでもないです」「とんでもないことでございます」とわかりました。
では、例文として「とんでもないです」「とんでもないことでございます」の正しい使い方はどうなるのでしょうか?
適切な場面で正しい使い方ができるように、例文をまとめます。
「とんでもないことでございます」の正しい例文まとめ
「とんでもない」を辞書で引くと、大きく分けて3つの意味があります。
その3つの意味ごとに、それぞれ例文をまとめますね。
「思いがけない」「意外である」の意味
- とんでもない大発見をした
ルパン三世の銭形警部がクラリス姫に言った名セリフ「やつはとんでもないものを盗んでいきました。あなたの心です。」も、この意味ですね。
「もってのほか」の意味
- 大事な商談をすっぽかすとは、とんでもない!
「あり得ない」のようなニュアンスで、悪い意味合いで使いますね。
「めっそうもない」の意味
- 上司「素晴らしい成果を出してくれて助かったよ!」、部下「とんでもないことでございます」
相手の言ったことを遠回しに否定する意味でもあり、「とんでもない」を丁寧語で言うケースはこのパターンが多いでしょう。
目上の人からお礼を言われたり褒められたり、謝罪されたりしたとき、それに対して謙遜する意味になりますね。
「とんでもない」を使いすぎると相手の言葉を強く否定することになる
相手に対して「とんでもない」をたくさん使いすぎることは、あまりおすすめできません。
「とんでもない」は謙遜の意味ではあると言っても、相手の言葉を軽く否定する意味だからです。
何度も「とんでもないことでございます」と言った場合、相手に対して「それは違います」と否定しているのと似たニュアンスになりかねません。
謙遜することはとても大事なことですが、あまりに連呼するのはよくないので覚えておいてください。
上司やビジネスメールに使うのは避けたほうが無難?かわりに何と言う?
「とんでもない」は、謙遜の意味合いとはいっても相手に対して否定するニュアンスを含んでいる言葉です。
そのため、上司など目上の人やビジネスメールなどで使わないようにしたほうが無難だと思います。
使い方のほかに、言い方の「とんでもございません」の問題もあります。
「とんでもございません」「とんでもありません」は、文法的に間違った言い方であることははっきりしています。
ただ、「とんでもございません」の言い方が慣用的に使われていて、「とんでもないです」「とんでもないことでございます」が逆に不自然に感じられる恐れもあります。
そのため、「恐れ入ります」や「恐縮です」などの言葉を使ったほうがスムーズにいくと思います。
また、目上の人に褒められたときは、「ありがとうございます」「光栄に存じます」などの言葉でストレートに嬉しい気持ちを言ったほうが伝わりやすいでしょう。
細かいところを気にし過ぎず、相手に失礼にならないことが一番大切
「とんでもない」の丁寧な言い方と正しい使い方についてまとめました。
- 「とんでもございません」「とんでもありません」は、間違った言い方
- 文法的に正しいのは、「とんでもないです」「とんでもないことでございます」
- 「とんでもない」は、相手の言葉を否定する意味を含んでいる
- 使いすぎると相手のことを強く否定するニュアンスになるリスクがある
- ビジネスのシーンでは「とんでもない」は使わないほうが無難
「とんでもございません」が日本語として間違った言い方であるのはあきらかですが、そこばかりを気にし過ぎるのもいけません。
あくまで、相手に対して失礼にならないようにするのが言葉であり、細かいことや1つのことを気にし過ぎて大事な部分で失礼にならないようにしましょう。
大切なことは、言葉を完全に正しく使うことよりも相手を敬う気持ちのはずです。
「とんでもない」を正しく使うことのほかに、相手への気持ちも大事にしてくださいね。
そうすれば、相手にきっとよい印象を与えられるはずです。