非常口のマークと言えば、誰もが一度は見たことがあるおなじみのデザインです。
人が避難しようとしているところを図案化した、緑と白の2色デザインのマークですね。
あまりじ~っと見ることは普段ないでしょうけど、火事や地震などの災害が起こったときに役に立ってくれます。
また、非常口のマークの位置を確認しておくことで安心感も持たせてくれますね。
そんな私たちの生活になくてはならない非常口マークですが、描かれている「人」の名前をあなたは知っているでしょうか?
デザインのメインと言ってもいい存在ですが、名前が何か気になりますよね。
あの「人」には名前があり、さらに世界中でちょっと姿を変えつつ活躍しているというおもしろい事実もあります。
あの「非常口マークの人」の誕生から名前、そして世界での活躍についてまとめます。
非常口マークの人の名前は「ピクトさん」!名づけの由来は?
非常口のマークで走って避難している人の名前は、「ピクトさん(ピクトくん)」と言います。
「ピクトさん」って親しみのある名前で、つい呼びたくなっちゃうかわいらしい呼び方ですよね。
この「ピクトさん」という名前はどういう意味なのかというと、「ピクトグラム」から由来しています。
では、ピクトグラムっていったい何なのでしょうか?
ピクトグラムとは、世界中の人が見て意味がわかる絵文字
「ピクトグラム(pictogram)」とは、情報や注意を示すために表示される視覚記号や絵文字のことです。
言葉が通じなくても、どこの世界の人が見ても意味がわかるように作られています。
日本語がわからない外国の観光客の人たちでも、どういう案内や注意がされているかわかるわけです。
たとえば、日常でかなりの頻度で見かけるピクトグラムには、公衆トイレの入り口の男性と女性のマークがありますね。
あの直立した男性と女性の絵を見て、公衆トイレであることがわかり、さらに男性用と女性用までわかりますね。
このように、文字がなく絵だけのデザインで意味を伝えることができるのがピクトグラムなんです。
人が描かれていなくても、たとえばタバコの絵に斜線が入っている禁煙マークもピクトグラムの一種です。
ピクトグラムは1964年の東京オリンピックのために作られた
「ピクトグラム」は今の時代は日常にたくさんあふれていますが、なんと意外にも日本人が考えた日本発祥のものなんです。
ピクトグラムのはじまりは、1964年(昭和39年)に開催された東京オリンピックの時代までさかのぼります。
1964年の東京オリンピックはアジアで初めて開催された五輪大会で、当時の日本は海外からたくさんの人が来るなんてとても珍しいことでした。
そのため、外国人向けの案内看板などをどうするかを考えた結果、たくさんのピクトグラムを考案して作り出しました。
ピクトグラムは、オリンピック開催でたくさんの外国人を迎えるためのものだったんですね。
非常口のピクトグラムは1982年に公募によってデザインが決定した
ピクトグラム自体は1964年の東京オリンピックのために作られましたが、非常口のピクトグラムのマークは、もっと後になって作られたものです。
1982年に一般公募でデザインが決定しました。
それ以前の非常口には、「非常口」という文字が書かれただけのものだったんです。
しかし、小さい文字だと火事のときの避難時に見つけにくかったり煙で見えにくくなったりして安全性に問題があります。
だからと言って、「非常口」の漢字を大きく書いたデザインでは、威圧感があったり小さな子供が怖がってしまうなどの問題がありました。
そこで、誰にでもわかる非常口のデザインが1979年に公募され、およそ3300人の応募の中から選ばれたデザインを改良して作られたのが現在の非常口マークなんです。
さらに、1987年には国際標準化機構 (ISO) が定める国際規格に組み込まれ、世界基準になりました。
世界基準になるくらい優れたデザイン性を兼ね備えているのが、日本で生まれた非常口のピクトグラムなんですよ。
日本の非常口マークが世界基準だが海外のデザインは少し違う?
海外の非常口マークって気になる🏃 pic.twitter.com/CYKpWUgupU
— みかん (@sma909) September 13, 2019
日本で生まれて世界基準となった非常口のマークですが、外国でも全く同じデザインというわけではなく、ちょっと違うケースがあります。
普段よく見かけるのとは違う、ちょっとおもしろい非常口マークを紹介します。
非常口マークの海外のデザインは、人の体勢やEXITの文字などに違いがある
台湾の非常口のマークは日本より必死pic.twitter.com/OkUkpJDT2L
— 素晴らしきムダ知識bot (@muda_chishiki) August 21, 2020
海外の非常口マークで、台湾の非常口マークは描かれているピクトさんの走り方が必死な雰囲気が伝わってきます。
台湾の非常口マークの大きな画像はこちら
日本と違って、前の足をピーンと伸ばすくらい必死に走って逃げて避難しています。
これくらいの姿を見せないと、避難のときの緊張感が出ないかもしれませんね。
と言って、あまりに気持ちを焦らせてしまってはいけませんが・・・
どちらかというと、非常口のマークにピクトさんが描かれているのはアジアの国が多いようです
欧米ではピクトさんが描かれていないケースもあり、たとえばアメリカでは「EXIT」の文字が大きく書かれているものが一般的になります。
日本でいう、大きな文字で「非常口」と書かれているようなイメージです。
日本にも珍しい非常口マークがある?このデザインになったおもしろい理由
高2の時(7年前)修学旅行で行った釧路・和商市場の地下駐車場で撮った非常口の標識。
3枚目は絶滅したらしい。
ずっと残してもらいたいなぁ。 pic.twitter.com/Kp3U34bIma
— tsuneshun (@tsunetter1101) February 12, 2017
実は、日本にも変わったデザインの非常口マークが存在するんです。
その珍しい非常口マークは、北海道釧路市にあります。
釧路市にある「和商市場」の地下駐車場の非常口マークは、ピクトさんではなくスカート姿の女性のシルエットになっています。
これは、世界基準になっているピクトさんのデザインを無視して作ったわけではありません。
実は、デザインが決まった1982年より前に設置された非常口マークだからなんです。
現在のマークが決まる前に作ったものなので、デザインが違っているのは当たり前ですよね。
現在のピクトさんになる前の時代でも、人が走って避難する様子をきちんとデザインしているところが素晴らしいと思います。
このデザインの非常口マーク、今後も残していってほしいですね。
非常口マークで緑地と白地のデザインの意味の違いは?
ここまで非常口のマークのデザインについて解説してきましたが、デザインについてもう1つ気になるところは色違いのものがある点です。
全体が緑地のデザインのマークのほかに、白地のデザインのものも見かけますよね。
この2つのデザインの意味の違いは、非常口そのものと非常口への避難経路の違いになります。
- 緑地のデザイン:非常口の場所を表すマーク
- 白地のデザイン:非常口までの経路を示すマーク
白地のデザインのものには一緒に矢印が書かれていて、その矢印の方向へ行くと緑地の非常口マークがあるというわけです。
非常口への経路まで示してくれるなんて、親切なピクトグラムですね。
これを知っておくと、いざというときに避難するときも安心ですよ。
日本発祥の非常口マークやピクトグラムはおもてなし文化の産物
日常でよく見かける非常口のマークデザインについてまとめました。
- 非常口など、世界共通でわかるデザインのマークをピクトグラムと呼ぶ
- 1964年の東京オリンピック開催にあたり、日本でピクトグラムが作られた
- 「ピクトグラム」から、非常口マークの人の名前は「ピクトさん」と呼ばれる
- 日本発祥の非常口マークは世界基準だが、海外ではデザインに少し違いもある
- 緑地のマークは非常口を表し、白地のマークは非常口までの経路を表している
街のあちこちで見かけていた非常口のマークにも、いろんな歴史とエピソードがあるんですね。
非常口のマークをはじめとするピクトグラムには、日本人ならではの「おもてなし」の気持ちが込められています。
日本に来た外国人の人たちが日本で不自由しないように、という「おもてなし」の精神から作られたものなんです。
まさに、日本人らしい文化が産んだ素晴らしいデザインと言えます。
日本で生まれて世界基準のデザインとなり、人々の安全と安心のために活躍してきた「ピクトさん」です。
これからも、いざというときにはちゃんと安全に避難できるように、ピクトさんの姿をしっかり確認しておくように心がけましょう。